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文鳥日誌 birdwhite.exblog.jp

とびとびにっき


by Bird_W

ROMAを観に行った

いい休日だった。
朝方の曇りが午後には晴れて。
朝ごはんをゆっくり食べ、昼ごはんをのんびり食べて。
合間に家事をし整えて。勉強もした。
机に乗った雑多なものを、ずいっとのけて場所を作る、そんな日。

それから「行っておいでよ」と言われて出かけた。
春めいた陽気の街。空いた地下鉄の席で、今日は用事はすっかり忘れようと決めた。
そして映画を見るんだ。
予告編を一瞬みたとき、これは万難を排してみるべしと思った。
それも映画館で。
この映画。



圧倒的な映像美。そぎ落とした白黒の深い構図。
白と黒の間でグラデーションは限りなく変化し、
光と影はさまざまに姿を変えた。
人間のあれこれにまみれた思いが、光のせせらぎで洗われて輝きとなり。空に消えていく。
そんな映画。

空は白と黒のあわいでもやっぱり空という空間になっていた。
夜中の火事やうねる大波、この映画の中ですべて黒から白へ、あるいは白から黒へのの高まりにいた。

そして音。
世界というのは音の森。
私たちは耳によって四方八方から音を聞き、
その時々で音を拾い上げていることを実感する音響。

メキシコの大きな自然。
運命を呪いつつも生きるしかない社会。
メタファーにあふれた映像。
笑いと悲しみに揺れる人間。

あれやこれやのことをすっかり忘れて、エンドロールをずっと見ていた。
この光と影の中にうずもれていたい。
そう思ったのは一人だけではなかったようで。劇場のそこかしこに人影があった。
そう、影が。

銀座のイルミネーションは、どこかの星のよう。
ひっきりなしに夜にこぼれていく。

いい休日だった。
柔らかい春の夜を自転車で帰った坂道。

灯りをともし、手を洗ってタオルで拭いて。
雑多なものでうずまっている日常。
映画の中のカメラのようにすっとひいて長く見る。
余計な音をおとしてきく。

そうね、それは幸せ。そして美しい。



by Bird_W | 2019-03-23 12:00 | Trackback | Comments(0)